ホッと胸を撫で下ろし、『十代との大切な思い出♪』を閉じた。


んっ・・・?


さっきは、『十代との大切な思い出♪』という衝撃的なフォルダー名で気付かなかったけど、記念写真フォルダーの中にある『D』とだけ付けられたフォルダー・・・。


D・・・・・・でぃーぷ・・・?


「Dファイル?何だろう、これ?」

気になりだしたついでで、このDフォルダーも確認してみた。

「えっ・・・何、これ・・・」

オレは開いたフォルダーのサムネイルを見て驚愕した。
取り憑かれたように片っ端からファイルを開く。



名蜘蛛コージの銃殺写真・・・。



不動遊星の銃殺写真・・・。



デイビット・ラブの変死写真・・・。



「これ・・・これも・・・」

次々とフォルダー内の写真を開くと全て死体の写真だった。
画像ファイルの中に一つだけあったテキストファイルを開いてみる。


これは・・・!


これは、カイザーの遺書・・・!?

「どういうことだよ・・・?何故、これがここに?」

















「見つかっちゃった・・・」

















振り向くと、いつの間にか背後にヨハンが立っていた。

「ヨハン・・・。どうしてカイザーの遺書が・・・?何で名蜘蛛や不動の死体写真がここに!?」
「もっともっと、十代と分かり合えてから・・・一緒に楽しもうと思っていたんだけどな・・・クヒィヒィ」

楽しむ・・・一緒・・・?
どういう意味だ。

「言っただろ、十代・・・。オレは何でも記念に写真に撮りたいタチなんだって。クックックックッ・・・」

記念・・・・・・死体が記念!?

「ヒィッヒッヒッヒッ・・・。でもさ〜、あの銀行強盗事件は楽しかったな。フヒッヒッヒッ・・・」

銀行強盗事件・・・って?

「あいつら簡単に・・・クヒィ。一度に五人も・・・ククククククッ。楽しかったなぁ・・・気持ち良かったぁ・・・」

何を・・・、一体何を言っているんだ?
ヨハンの・・・・・・ヨハンの様子がおかしい。
笑みを浮かべながら話す口振りにはいつもの陽気さはなく、まるで、何かに取り憑かれたかのように影を帯びた形相で話し続ける。

「また見たいな・・・。また一緒に出来るよねぇ?」

その、セリフっ!!
あの銀行強盗事件後、GX待機室に掛かってきた謎の電話と同じセリフ。

「ヨハン・・・、お前・・・まさか!?」
「でもさ、カイザーやデイビットは勿体なかった。転落死だと潰れちゃうだけで・・・全然感じなかった」
「お前が・・・お前がやったって言うのか」
「あぁ、そうだよ・・・。なかなか十代がオレを理解してくれないから・・・。実際に美しさを見て分かってもらおうと思ってね」
「不動遊星もお前が撃ったって言うのか」
「あぁ・・・あのデイビットの操り人形か・・・。なかなか十代が撃たないモンだから・・・我慢出来なくて・・・ヘヘぁ。バーンってね」

得意気に話すヨハンに、何がどうなっているのか・・・目の前で起きている事態を把握出来ない・・・。

「デイビットと何度も電話で相談してたからよく出来てただろ・・・あれさぁ」










『じゃあ、カイザーがデイビットの会社のプログラマーを殺したってのは本当なんだな』
『あぁ、確かだ。あの時は裏切られて本当にウイルスソフトをバラ撒かれる直前でネ。大統領から依頼してもらったんだ』
『だったら好都合だ。それを理由にすれば十代は素直に信じ込むに違いないよ』
『Meもカイザーのおかげでこの素晴らしさに魅了されてしまったからネ。元部下のジュウダイにも協力してもらおうじゃないか。クククッ』
『あぁ、きっと十代も理解出来るようになるよ。この開放感。美しさに』
『ククククッ。新しい仲間の誕生だな・・・快楽殺人クラブの・・・』










・・・。
信じ・・・られない・・・。


言葉を失っているオレに対して、ヨハンは続けてラブソフトでの真相を振り返る。

「デイビットの奴、飛び出したオレを見て『Oh〜マイフレ〜ンド』とか言いそうになりやがって・・・」

ヨハンの説明によれば・・・デイビットの罠に掛かりオレが襲われていたあの時。
助けに偶然、駆けつけてくれたと思っていたヨハンは不動殺害を傍観しようと既にコンピューター室に潜んでいた。デイビットの暴走を目の当たりにして思わず飛び出したのだと・・・。

『十代!』

デイビットとヨハンの二人が身を潜めていたのは二人の間では周知の事実で、デイビットは、ヨハンの姿を見るなり好意的に声を掛けた。

『Oh〜!マイ・フレンド、ヨハン・・・』

事前の示し合わせと異なる暴挙に出たデイビットに対して、ヨハンは咄嗟にデイビットの口を塞ぎ、

『むがふがほご・・・!?』

そのまま窓際まで押し付け・・・、

『余計な手間掛けさせやがって・・・死ね』

ガラスの窓をぶち破ってデイビットを突き落した。

『うぉおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!??』





気味の悪い悪い笑みを浮かべながら得意気に喋り続けるヨハンに、説明の時間軸に整合性感じながらも・・・信じられない。
今、目の前にいるヨハンの様子は普通じゃない。

「クヒヒヒヒッ・・・クヒヒヒィ・・・ククッ」


!?


何かに陶酔している様子で突然ヨハンが声を出して笑い出す・・・。

「ヨハン・・・?」
「じゅうだい〜。オレたちで・・・二人だけの世界を創ろぉ〜。恐怖と快楽に満ちた・・・オレたちの世界を」

違う・・・。
何かの間違いに違いない。
これが、これが真実だったなんて理解出来るかッ!!
ヨハンの説明も、今、目の前にいるヨハンも信じたくない。
突き付けられた悪夢を掻き消すように怒号を叫ぶ。

「ふざけるなっ!目を覚ませ、ヨハン!!」
「十代・・・?何故分からないんだ。・・・そうか、アイツだね。やっぱり十代に紹介するんじゃなかった」

オレの怒号の問い掛けにヨハンは焦点が定まらない目付きで呟く。

「アイツが十代の心を揺さぶってるんだ。アイツがいなくなれば・・・待ってろ、十代」

そう言い残すと、ヨハンは突然部屋を飛び出して行ってしまった。
ヨハンが呟いた『アイツ』って・・・。
とにかく、ヨハンを追い駆けないと。
ヨハンが・・・ヨハンが狙っているのは誰なんだ!?
誰に連絡すれば良いだろう?



丸藤亮
大徳寺先生
ヨハン・アンデルセン
丸藤翔
万丈目準
天上院吹雪
ユベル・アンデルセン